大判例

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東京高等裁判所 昭和35年(ネ)2018号 判決

被控訴人等が上記和解契約において本件建物につき代物弁済予約完結権のほか、任意競売手続の続行を申立てる権利を併有し、そのいずれを行使するかは被控訴人等の選択に委せられたこと、及び被控訴人等が昭和三十一年九月十五日後者の権利を行使したことは当事者間に争がない。

しかし右のように抵当権実行のための競売手続を続行するか又は代物弁済の予約を完結させるかの選択を委ねられている場合に、債権者がその選択権によつて、先づ抵当権実行のため競売の申立をしたからといつて、特約ある場合その他特別の事情が認められないかぎり、その一事だけでは、代物弁済予約完結権を失うべきものではないと解するを相当とする。なんとなれば、代物弁済の予約が存するだけでは競売手続の進行になんの妨げにもなるものではなく、その最低競売価格が債権者の考えていたよりも低廉で、とうてい債権額に満たないことが明かであると思われる等の事情の存するときは、債権者は競売期日に適法な競買の申出があるまでは、競売の申立を取下げることもでき、またなんらかの事由で競売手続が取り消され、債権者の満足を得ることなく右手続が終了することもあり得るのであるから、債権者が一たん抵当権実行の方法を選択したとしても、その後の事情により方針を変えて代物弁済の予約完結権を行使することを妨げらるべきではないと解するのが相当である。

(村松 伊藤 杉山)

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